1988年、東京晴海で開催された東京モーターショーで衝撃的なデビューを飾った
ヤマハのオン・オフロードデュアルパーパスマシン、それがTDR250Rだった。当時 全盛を誇ったレーサーレプリカの中で1,2を争っていたTZR250(実際には当時ホン
ダのNS250よりシェアは大きかった。なにせ、オリジナルデザインのNSよりもレーサ ーTZとそっくりのボディーを持っていたのだから当時のレーサーレプリカファンは熱狂
した)のエンジンをそのまま載せてしまったオフロード車だったのである。 そのTDRのデビューと同時に風間深志氏、根津甚八氏、浅井明氏の3人でエジ プトのファラオラリー(現エジプトラリー)への参戦というニュースがバイク雑誌に載っ たのでした。 今回、ふとした事から3台だけ制作されたTDRのワークスレーサーをレストアレー ションする機会に恵まれた。 |
正面からの投射面積は車高が上がっている分以外はそれほど市販車と変わらない。 |
補助タンク上にサイレンサーが固定されているのがわかる。 |
当時のイメージがまだ新鮮でも(歳ばれますね・・・)月日の流れは速い物ですでに15年近い月日が経過している。何回かの転倒もあり、アルミ製2分割タンクは凹み色あせていた。凹んでいた部分がエッジラインとの事もあり、一度切り開いて溶接しカウリング等含めウレタンで再塗装を行なった。 今回のレストアと改装作業は通常のツーリングなどでも使えるようにというオーナーのオーダーもあり、一部当時の状態を正確には復元していない。例えば、写真左のメーターパネルは機械式水温計の代わりに電気式タコメーターに変更、その代わりにヨシムラのマルチデジタルテンプメーターを装着、ウィンカーなどのインジゲーターも新設されている 。 |
エンジン内部は見た目ほとんど市販車と変わらない。過酷な条件での耐久レースの場合、スプリントレースのようなカリカリのチューニングはデメリットとなる要素が増えるからだろうか。ただし、チャンバーはインナーパンチングメタルは製造時に挿入されてなく、見た目同じながら排気音・吹け上がり方ともにノーマルと異なる。 アルミ製エンジンガードはウォーターポンプの保護と共にボルト2本外すことでセンタースタンドとして使える工夫も。ドライブスプロケットカバーは元々オープン式の物が装着され、その代わりに転倒時にシフトシャフトの曲がりを防ぐ事と剛性を高める為のサポートが装着されていた。元々オイルポンプを廃止した混合仕様だったのだがオイルポンプを装着し、分離給油に改造してある。オイルタンクはシート下のウォータータンクを改造し大容量のオイルタンクになっている。 |
燃料タンクは前記の通り2分割で内部にはガソリンが減ったときの揺れを防ぐ防爆材のウレタンが挿入されている。ビッグタンクをもつバイクのオーナーには使えるテクニックの1つで、ヤマハTZのパーツリストにも記載されているので興味のある方は使ってみては。 Rピンで固定されたタンクは片側とフレーム前側をヒンジにしてメンテナンスの為開くことが出来る。シート前はRピンと蝶ナットで固定された乾式エアークリーナーが収まり、レース中のエレメント交換が瞬時に出来る。 タンク容量は50Lでシート下左右の4個のタンクに分割し、それぞれ独立したコックと燃料フィルターを持っている。途中、負圧式の燃料ポンプに装着され、リアタンクからの燃料はポンプによって圧送される。 |
リアスイングアームはSTDと変わらない印象を受けるが若干の延長が施されていた。写真ではわかりにくいのだが、スプロケットは逆オフセットされたワンオフ物が装着されており、チェーンラインが合わされている。エンジンマウント位置が変更されているか、このスイングアームに合わせて製作された物と思われる。チェーンはRKエキセルの520RW。 |